クローズアップ
この新CM「消臭力」はどこの会社がつくったの?

そんな質問を時々受ける。が、正直、答えに迷うことがある。「博報堂だよ」って答えた後で、心の中で「いやそうじゃない」と断言する自分がいる。今回の消臭力CMは「TYO」という制作会社の貢献があってのことだから、博報堂とTYOと答える。でも、やっぱり違うなあ、自分でいうのも変だが、今回はエステーだって相当がんばったと思う。博報堂とTYOとエステー。それに、タイでのコーディネート会社アジアコーディネーション。音楽のMAXMANは絶対忘れてはいけない。

いや、待てよ。その答えはしっくりこないどころか、大切な人が忘れられている。

石井監督だ。どこの会社?という質問自体が、フリーの石井監督の存在をなくしてしまう。「会社がCMを作っているわけではない」という、当たり前の結論に達する。

じゃあ、このCMは一体誰がつくったの?
って聞かれたら、どうする?

やはり、答えに窮する。

正直、今回のお菓子の家のアイデアは私だった。「お菓子の家が臭い。子供たちが魔女につかまって、魔女が『消臭力買ってきて』とお願いしたりする。アハハ、おかしい。」1年前から私の頭の中にあって、どうしてもやりたかった企画である。しかし、私がこのCMを作ったのでは断じてない!

CMで最も大切だと信じているコピーは黒松氏が編み出してくれた。消費者をいっしょに何度も観察して「消臭剤代表」という名コピーを生み出してくれた。彼のおかげで、ぎゅっと引き締まったCMになった。

しかし、このCMの命をつくってくれた黒松氏も、映像はつくっていない。

博報堂の横沢氏が私の相棒となってくれた。2007年クリエイティブオブザイヤーの特別賞をも手にした心強い秀才だ。この企画の方向性を見事に解釈し、具体的な企画コンテに上手にしあげていく。原石を磨くとはこのことだろう。

でもこのCM、横沢氏がひとりで育てたのでは決してない。

石井監督が参加した。企画コンテに見事な魔法をかけていく。「お菓子の家はこうでなくちゃ。登場するキャラはこんな感じの洋服を着て。魔法の杖はこうだ。」と監督の頭にどんどん世界が広がっていく。こだわりは止まらない。彼みずから、小道具の「魔女のお札」を徹夜でつくり変えてしまう。450枚の絵を連続させて見るのが15秒CM。彼は、その1枚1枚の絵を芸術作品に仕上げていった。

それでも、石井監督がこのCMを現実にしたんじゃない。

世界感を現実にするために、1ヶ月以上の細かで大胆な準備をしたプロデューサー伊藤氏と福田氏がいた。企画そのものに影響を与える大切な業務だった。彼らの経験とノウハウと熱い行動がひとつひとつのイメージを現実に変換していく。例えばお菓子の家。撮影するタイ国の美術担当者と何度も話し合いを続けた。なぜならタイでのSWEETSと、日本で考えるお菓子は、別の概念なのだ。ケーキひとつとっても、その形状さえ違う。この文化の壁をとりのぞく地道な作業が、知らないところで続いていた。単なる制作のマネジメントではなく、イメージを現実にクリエイティブする作業だ。そして、この二人を助ける祐子女史がいた。タイでは、そのすべての動きをコーディネートしてくれるACという会社があった。アイダ社長、Mr.カワカツ、マキちゃん。彼らも、想像を超える現実の対応を迫られていた。

カメラマンさん、美術さん、スタイリストさん、ウサギの中で汗びっしょりになってくれた人、ご飯をつくってくれた人、まだまだいっぱいいるのです。


誰が作ったの?

制作リストの「み・ん・な」かなあ。

の、ほうがまだ正しい。 それでも、リストにのっていない立役者がいっぱいいたりする。

このCMに参加してくれた全ての人に
リスペクトを込めて

エステー宣伝部
クリエイティブディレクター 鹿毛康司