米唐番新作CM制作エピソード「監督に訊く!」

米唐番の新作CMが完成した。公開前の映像を観たのだが、その世界観を一言で表現するのは難しい。米唐番の歌をこぶしをきかせて歌い上げるさくらまやさん。その周りではサングラスをかけた女性ダンサーたちがキレキレのダンスを踊っていて、時折、炎がボォーッと舞い上がる。何かにたとえてみたいのだが、僕が今まで観てきたものの中に似たようなものがない。

今回、このCMを監督したのは、エステー特命宣伝部長の鹿毛さん。普段はクリエイティブディレクターとしてエステーのCMを統括しているが、今回は監督だ。タイでの撮影を終えて帰国した鹿毛監督からお話を伺う機会をいただいた。監督として、鹿毛さんがこだわったポイントはどの辺りなのだろう。

鹿毛さんから指定された喫茶店に向かった。

CM撮影風景1

鹿毛監督いきつけの喫茶店で

席に着くとすぐ、「僕の後ろから写真を撮って」とカメラマンに指示を出す鹿毛監督。顔出しNGということだろうか? いや、今までは特にそういう制約はなかったはずだ。監督という立場から何か思うことがあるのかもしれない。鹿毛さんの背後から写真を撮影させていただくことにして、今回の新作についてのインタビューを始めた。

CM撮影風景2

バックショットを希望する鹿毛監督

「CM好感度ナンバーワンを狙います」

鹿毛さんがCMを監督するのは今回が初めてではない。過去にも_2回ほど監督としてCMを作っている。3回目の監督作品となる米唐番の新作。鹿毛監督の満足度はどれくらいなのだろう?

鹿毛監督「もちろん、100点の出来だと思ってます。本当は200点なんですけど、放映後に入るであろうクレームなどを差し引いて、100点です」

鹿毛監督は自信たっぷりにそう言った。200点が出て来たことで何点満点なのか分からないし、1986オメガトライブの「君は1000%」と似た違和感を感じつつも、更に鹿毛監督の言葉は続く。

CM撮影風景3

新作に込めた思いを熱く語る鹿毛監督

鹿毛監督「去年の8月、うちのCMがCM好感度4位を獲得したんです。日本でオンエアされている全CMの第4位です。だから、今回は好感度ナンバーワンの座を狙いたいと思っています。今のナンバーワンはauのCMですので、打倒auですね。CM好感度でauを抜いて、auのユーザーを米唐番に乗り換えさせる。それくらいの気持ちでいますよ」

なるほど、かなりの意気込みであるが、auと米唐番では業種が違うような気がする。一応、聞いてみよう。

― auと米唐番では、業種が違うように思いますが…

鹿毛監督「auにはお米の虫よけは出来ない。まぁ、米唐番では通話が出来ませんが」

話が良く分からなくなって来た。一旦、休憩の意味も込めて、インタビューの場所を移すことにした。

CM撮影風景4

移動中も監督から話を訊くが

CM撮影風景5

常にバックショットを希望する鹿毛監督

CM撮影風景6

電車が通って

CM撮影風景7

良く聞き取れない

「鹿毛さんの監督術」

場所を鹿毛監督のデスクに移し、改めて新作のお話を伺う。

CM撮影風景8

改めて、鹿毛監督

ここでのインタビューも、再びバックショットを希望する鹿毛監督。

そうか、分かったぞ!

監督は背中で語る、きっとそういった趣旨なのだろう。自分が目立つことではなく、作品が目立つこと。それが監督としての希望なのだ。あれだけ派手な作品を作っているのに、実に謙虚な姿勢である。その強い思いに心を打たれた僕は、心の中で鹿毛さんのことをカゲルバーグ監督と呼ぶことに決めた。

CM撮影風景9

背中で語る、カゲルバーグ監督

カゲルバーグ「今回も優秀なスタッフが集まってくれました。そんな優秀な人たちの中で監督として作品を作る。それはとても大変なことです」

カゲルバーグ監督はその大変な仕事をどのように進めてきたのか?

カゲルバーグ「まず、スタッフと打ち解けることが大切ですが、今回は既に打ち解けた関係のスタッフを集めました。ただ、カメラを回してくれたワンさんは、カンヌ国際広告祭での受賞歴もある巨匠です。そう簡単には打ち解けることは出来ない」

その巨匠と、どのようにして打ち解けたのか?

カゲルバーグ「日本から日本酒を持って行きました。ワンさんは日本酒が大好きなのです。だから、奮発して大吟醸を持っていきました」

ん? 大吟醸?

カゲルバーグ「ワンさんの大好きな日本酒で打ち解けましたが、そこで更に気をつけないといけないことがあります」

それは?

CM撮影風景10

巨匠と打ち解けるポイントとは

カゲルバーグ「あまりしゃべらないことです。調子に乗ってしゃべり過ぎると、ボロが出ますから」

しゃべり過ぎるとボロが出る。それは、何かの喩えなのか、それともそのままの意味なのか。頭をフル回転して考えていると、カゲルバーグ監督は更に続ける。

カゲルバーグ「撮影の現場には50人くらいのスタッフがいて、編集の段階になると10人くらいに減って、いよいよオンエアって時には1人きりになってしまいます。だから怖いんです。この椅子がないと怖いんです。この椅子が壊れたらどうしよう」

ちょっと待ってください! 大吟醸のあたりから、話が見えなくなってきてるのですが…。

CM撮影風景11

この椅子がないと怖い?

カゲルバーグ「今回、河西さんという優秀な方が僕と一緒に監督をしてくれています。僕の考えたことを形にしてくれる役割です。撮影中、僕がトイレに立ったりすると、スタッフみんなが河西さんに_画作りの相談をしていたのを僕は知っています」

それと、この椅子と、どういう関係が?

カゲルバーグ「みんな優秀だから、僕は出来たものを確認するだけでいい。それだけだと、僕の役割が曖昧になってしまう。だから、この椅子が必要なんです」

え?

カゲルバーグ「だって、この椅子がないと監督だと分からないから!」

冒頭の喫茶店でカゲルバーグの背後にあった冷蔵庫のことを僕は思い出している。

CM撮影風景12

喫茶店の冷蔵庫に

CM撮影風景13

初心者マーク

監督として作品を背中で語りたい。それは、僕が勝手に描いた幻想だった…。カゲルバーグ監督にとって、この椅子は自分の肩書きを証明してくれる大事なツール。だから、今回のインタビューも常にバックショットを希望していたのだ。

そんなカゲルバーグ監督から、学生たちに伝えたいことがあるという。

カゲルバーグ「なりたい職業があったら、まずはその職業の椅子を作りなさい。そうしたら、人生が動き始める、かもしれません」

CM撮影風景14

社長から注意を受ける時も、ディレクターチェアーで何とか尊厳を守るカゲルバーグ監督

(by 住 正徳)


◆CM出演者

高橋愛

【名前】さくらまや
【生年月日・出身地】1998年7月26日・北海道帯広市出身
2003年、全国童謡歌唱コンクールファミリー部門で地区予選大会金賞受賞。
その後も数々の歌唱コンクールなどで優勝、入賞し、2008年12月3日、日本クラウンから史上最年少演歌歌手として「大漁まつり」で歌手デビュー。
2009年には第42回日本有線大賞『新人賞』受賞、第51回輝く!日本レコード大賞『新人賞』受賞、NHK紅白歌合戦「こども紅白歌合戦」に出場し、大きな注目を集めた。
2010年、第52回輝く!日本レコード大賞『日本作曲家協会奨励賞』を受賞。
最近ではテレビ番組で抜群の歌唱力を披露し、カラオケ・クイーンとしても大きな脚光を浴び、人気急上昇。
2013年7月には、Miguelとのユニット「MarMee」を結成し、シングル「お気軽ウッキーラッキー」をリリース。12月にはデビューアルバム「MarMee」を発売。
そして、昨年10月には本格的な大人の演歌「浜の恋女房」を発売している。




◆CM制作スタッフリスト

  • ◯広告会社:株式会社電通
  • ◯制作会社:太陽企画株式会社
  • ◯クリエイティブディレクター:鹿毛康司(エステー)
  • ◯アートディレクター:林耕平(電通)
  • ◯CMプランナー:瀬戸康隆(電通)
  • ◯アカウントエグゼクティブ:田口弘司、髙橋賢太、佐々木まい(電通)
  • ◯クリエイティブプロデューサー:木村千沙子(電通)
  • ◯キャスティング:千田未玲(電通キャスティングアンドエンターテイメント)
  • ◯プロデューサー:畑忍(太陽企画/Produce2)
  • ◯プロダクションマネージャー:草柳正太(太陽企画/Produce2)
  • ◯ディレクター:鹿毛康司(エステー)、河西奈津(Ray)
  • ◯カメラマン:Krittaya Sonthisawat
  • ◯編集:山岡大起(オフライン)、鷲谷康幸(オンライン)
  • ◯スタイリスト:横手智佳
  • ◯ヘアメイク:木下きのこ
  • ◯アシスタントスタイリスト:Jutatat Teerawattanachai、Suttinee Kamolnimitakul
  • ◯アシスタントヘアメイク:Atipong Wongsak
  • ◯現地コーディネーター:川勝清史(OmKatsu)
  • ◯作詞・作曲:鹿毛康司(エステー)
  • ◯音楽コーディネート:山田広(新音楽協会)
  • ◯音楽アレンジ:宮井英俊
  • ◯Recording Engineer:花島功武
  • ◯振り付け:上田協
  • ◯PRコミュニケーションプランナー:中村吉見(エステー)
  • ◯メイキング:平田駿介(エステー)
  • ◯現地プロダクション:OmKatsu Co.,Ltd.
  • ◯プロデューサー(タイ):川勝清史(OmKatsu)
  • ◯ラインプロデューサー: M.L.Jaroondet Voravarn
  • ◯アシスタントディレクター:Samrit Prathuangsawat
  • ◯美術:Phoobes Sittirak
  • ◯照明&特機:Gearhead Co.,Ltd.
  • ◯照明:Lek Hilight2008 Co.,Ltd.
  • ◯ドライバー:Kolokot Hiranputchong
  • ◯通訳:丸山由佳、古谷しのぶ