奇界の車窓から / オカンからLINEが来てUFOを撮影してしまったのでちょっと見てもらいたい、と言われた件
2017.04.14
世界中の奇妙な場所を撮影し続ける写真家・佐藤健寿。ここ「奇界の車窓から」では、写真集に載せるほどでもないけど、ちょっぴり奇妙だった写真を紹介してもらいます。2回目は、味わい深いUFO写真の登場です。
「オレは誰?」って何?
- スミ
- 奇界の車窓から、第2回ということで。
- 佐藤
- よろしくお願いします。
- スミ
- 佐藤さんは花粉症ですか? 唐突にすいません。
- 佐藤
- ばっちり花粉症ですね。
- スミ
- えっ!本当ですか? 花粉症なのに、バリバリアウトドアじゃないですか!
- 佐藤
- そうですね、でも不思議なもので東京離れると割と大丈夫だったりするんですよ。
- スミ
- 僕も花粉症がひどいので、春先は行動力が落ちます。
- 佐藤
- 全体に低下しますよね。人間としての性能が。
- スミ
- でも、東京離れるという裏技があるんですね。
- 佐藤
- 今本を作っているので、撮影よりも執筆に影響する方が被害甚大です。
- スミ
- そうか、執筆は東京ですもんね。
- 佐藤
- そうですね、気持ち的なものかもしれないですけど。でも、先日名古屋でお祭りを撮影していたときは、花粉がきつくて、マスクにサングラスで撮影してたので。
- スミ
- マスクにサングラス。
- 佐藤
- 不審者でしたね。
- スミ
- きっと帽子も被ってますよね?
- 佐藤
- そうですね。帽子も被ってること多いので、かなり不審です。お祭りの撮影なんかだとマスコミ側で撮ることが多いんですが、マスコミの人ってみんなピシッとしてますから、あんまり僕みたいな人もいなくて。さらにマスクにサングラスだから、じろじろ見られたりしますね。
- スミ
- 名古屋のお祭りは、奇祭ですか?
- 佐藤
- はい、有名な奇祭です。田縣神社の豊年祭という。
- スミ
- あっ、今画像検索したらすごいの出てきました。
- 佐藤
- そっち系のお祭りとしては、西の横綱みたいなお祭りですね。
- スミ
- 横綱感あるわ~。
- 佐藤
- この時はさらに、地元の人が気を利かせてくれてはっぴを貸してくれたので、それ着てマスクにサングラスで、男根撮影ですから、意味わからないですよね。
- スミ
- 間違い探しクイズだったら、佐藤さんが正解ですね。
- 佐藤
- ぱっと見で分かる一番簡単な正解ですね。難しいところは神輿の男根のサイズが微妙に違うとか。
- スミ
- それはグッと難易度が上がる!
さて、今回のアウトテイクスはどんな写真を? - 佐藤
- 名古屋に行くといつもきになるんですが
- 佐藤
- まずこれですよね。
- スミ
- なんですか、これは?
- 佐藤
- これ、名古屋のわりと駅とかタクシー内とかいたるところに貼られてるんですけど。
- スミ
- STOP特殊詐欺って書いてますね。
- 佐藤
- 要はオレオレ詐欺撲滅の啓蒙ですよね。あなたがお金を振り込もうとしている「オレ」は「誰」なのか?
- スミ
- ごめんなさい、ちょっと分からないです。振り込もうとしてるオレは誰? って?
- 佐藤
- これから振り込もうとしている人に対しての警告ですね。あなたの息子を名乗る「オレ」とは「誰」なのか?と。
- スミ
- あ、なるほど。そういうことか!
- 佐藤
- それをコンパクトにまとめすぎて、哲学的な問いみたいになってますよね。
- スミ
- ですね。まとめ過ぎてる!
- 佐藤
- 初めて見たのはタクシーの中だったんですが、随分哲学的なメッセージを掲示してるなと。
- スミ
- タクシーの中でこの問いかけされたら、しばらく考えちゃいますね。
- 佐藤
- 一瞬、タクシー運転手から客に向けた問いなのかと思ったり。あなたが安心したつもりで乗車してるこのタクシーの運転手は誰かと考えたことがありますか?みたいな。
- スミ
- それ怖いですね。いきなり運転手が振り返って「オレは誰だ?」って聞かれたら。知らんがな!ですけど。
- 佐藤
- これも先日の、いかのおすし問題とも繋がってくるんですが。これがATMなんかにも貼ってあって、つまりこのメッセージの対象は、今まさに騙されようとしてる人に対する警告だと思うんですけど。
- スミ
- ええ。
- 佐藤
- 今焦って振り込もうとしてる人に、この哲学的問いかけはまたシュールだなと。
- スミ
- 警告にはなりづらいですよね。振り込みながら、今までの人生を考えちゃいますよ、きっと。
- 佐藤
- なんか宗教勧誘の電話番号でもしたにある方がまだ腑に落ちる感じはありますね。
- スミ
- 入信しちゃいますね。
- 佐藤
- あなたは自分が誰だか考えたことはありますか?迷ったらお電話を→ みたいな。
- スミ
- いかのおすしとオレは誰。どっちもひねり過ぎて伝わりづらくなっちゃいましたね。
- 佐藤
- そうなんですよね。どうしてこうなった系は基本的に好きですね。その過程に至る、こじれた会議とか想像するのが好きです。
- スミ
- ああ、確かに! 会議室で最終的に「オレは誰?」に決まる訳ですからね。
- 佐藤
- そうそう、若い社員が出したのかもしれないし、もしかしたら年配の人が出した案でみんなふわっと疑問に思いながらも誰も言えなかったのかなとか。どちらも出元が警察ですから、そういう縦社会構図もありそうですし。
- スミ
- 踊る大捜査線で言うと、室井さんと青島刑事みたいなやりとりがあっての「オレは誰?」ですね。
- 佐藤
- 事件は解決してないですけど。
- スミ
- このスッテカーの下に、「電子マネーもカードもご利用ください」って書いてあるのがまた。
- 佐藤
- ややこしいですね、位置関係が(笑)。
- スミ
- とにかく、佐藤さんは「オレは誰?」と問いかけられながら豊年祭に行ったんですね。
- 佐藤
- そうですね、花粉でぼーっとしながら。
- スミ
- 夢かもしれませんよ。
- 佐藤
- 全部夢みたいな撮影が多いですね。
- スミ
- 奇界は夢のような世界、ですね。
- 佐藤
- お祭りとかは特にそうですね。撮ってる間はわりと夢中なので、あとで「こんなの撮ったっけ?」というのはよくありますね。
- スミ
- 酔って帰る途中とかに、全く覚えのない写真を撮ってることはあります。
- 佐藤
- ああ、たまにありますね。携帯みてこれどこだろうみたいな。あとは立て込んでると、先週どこに行って何を撮影したか思い出せなくなったり。先月海外のどこに行ったか思い出せなくなったり重症だなと思います。
- スミ
- 僕のカメラ、バッテリーを充電する度に日付がリセットされるんですよ。なので、写真データの日付があてにならなくて混乱することがあります。
- 佐藤
- なんですか、そのスパイ用携帯みたいな機能は笑。
「オカンからLINEが来てUFOを撮影してしまったのでちょっと見てもらいたい」
- 佐藤
- これは、自分が撮った写真ではないんですが。
- スミ
- うわっ、また情報が多いですね。
- 佐藤
- すいません、また情報過多な案件で。
- スミ
- えーっと、どういった写真ですか?
- 佐藤
- 先日、金沢でトークイベントをしまして、その時に打ち上げで関係者の人から「オカンからLINEが来て、UFOを撮影してしまったのでちょっと見てもらいたい」と見せられまして。
- スミ
- え? UFOですか?
- 佐藤
- この、おばちゃんの後ろにUFOが写ってるんですね。
- スミ
- あっ!左手の横ですよね?
- 佐藤
- そうです。いまどき珍しい、クラシックなUFO写真ですよね。
- スミ
- 佐藤さんの見立てでは、本物ですか?
- 佐藤
- うーん、本気で回答してもいいんですか?
- スミ
- ええ、お願いします!
- 佐藤
- まず「UFOでないとしたら」鳥か虫かなとは思うんですよね。ただ、携帯撮影らしいんですが、この日中の明るさでいうとシャッタースピードはおそらく1/1000とか相当早いはずです。オートだと思いますが。
- スミ
- ええ!
- 佐藤
- で、そのスピードでこのブレ方だとすると、相当早い虫か鳥なのかなと。
- スミ
- え!虫ですか?
- 佐藤
- スカイフィッシュってあるじゃないですか。
- スミ
- はい!
- 佐藤
- あれも一般的には虫を遅いシャッタースピードで撮影するとああいう風に写ると言われてるんですよ。
- スミ
- えっ!そうなんですか? スカイフィッシュっていないの?
- 佐藤
- シャッターが開いて閉じるまでの間に虫が30cmくらい進むとああいう風に写るんです。だからシャッタースピードが遅い洞窟とか暗いところで取られがちなんですが。
- スミ
- この写真は違いますよね?
- 佐藤
- この写真はそうですね、スカイフィッシュではなくUFOですよね。見事なまでの円盤型で。
- スミ
- はい、形状が明らかに人工的ですよ!
- 佐藤
- しかもシルバーっぽいという。
- スミ
- ええ!ええ!
- 佐藤
- なんか昔のムーとかの読者投稿に載っていそうな写真ですよね。オバちゃんのポーズとか構図も完璧なんですよ。さらにいえば、UFOの位置も、すごくいい。
- スミ
- 黒ボコ岩とか、オカンはどこに立ってるのかとか、UFOが写ってるとか。すごい一枚ですね。
- 佐藤
- あ、ちなみに「オカン」は撮影者で、写っているのは「オカンの登山仲間」です。念のため。
- スミ
- あ、そうだったんですね!関係者のオカンがピースしてると思ってました!
- 佐藤
- ややこしくてすいません。だからオカンは撮影時気づかなかったそうなんですよ、物体に。比較に直後に撮った写真も見せてもらったんですが、そっちには写ってなかったんです。そのあたりも古典的UFO写真ぽくていいですよね。
- スミ
- 志村、うしろ!の世界ですよね。
- 佐藤
- そうそう、下山後に写真を見て「UFO!」みたいな。
- スミ
- やはり、デジカメとかスマホとかになって、UFO写真の質が変わった感じはありますか?
- 佐藤
- そうですね、フィルムの時代からUFO写真の8〜9割は光学的な現象の見間違いだとも言われているんですが、デジタルになって、CMOSというのがセンサーですけど、そのCMOS特有の現象がUFO扱いされたりすることは多くなりました。あとはカメラ自体が高性能化してるので、こういうクラシックなUFO写真はなかなか撮られないですよね。
- スミ
- ある意味、貴重な一枚ですね、この写真。
- 佐藤
- なかなかないです。こういう味写的UFO写真は。
- スミ
- この後、登山仲間のピースの間に入ってたら面白いですね。スミ 捕まえた!みたいで。
- 佐藤
- それはまた大事件になりますね。ヤフーニュースくらいには乗るんじゃないでしょうか。で、矢追さんがコメントしそうな。
- スミ
- この写真、矢追さんにも見てもらいたいですね。
- 佐藤
- 即断で、ああ、UFOだよね、って言ってくれると思います。
- スミ
- おお!やっぱりUFOなんだ!
- 佐藤
- 未確認である以上UFOですよね。
- スミ
- あ、そういうことですね、、、がっくり、、、。
- 佐藤
- いやいや、まだわからないです。
- スミ
- この登山仲間には幸せになってもらいたいですね。
- 佐藤
- もう幸せだと思いますね。
- スミ
- あ、UFO効果で、既に!
- 佐藤
- ハッピーな感じが写真から溢れてますし。
- スミ
- 幸せを呼ぶUFO写真、いいですね。
- 佐藤
- あれ以来幸運が続いてる、みたいな。ありそうですよね。
- スミ
- UFOに連れ去られなくて、本当に良かったです。
- 佐藤
- もし連れ去られてたら、日本のUFO史に残る平成の大事件ですね。
- スミ
- いやぁ、いい写真を見せてもらいました。ありがとうございます。
- 佐藤
- いえいえ、こちらこそ。また何かあったら送りますね。
- スミ
- 登山仲間のその後の写真も是非!
- 佐藤
- あるか聞いてみます(笑)
プロフィール

名前 | 佐藤 健寿 |
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武蔵野美術大学卒。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)は異例のベストセラーに。著書に『世界の廃墟』(飛鳥新社)、『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』『ヒマラヤに雪男を探す』『諸星大二郎 マッドメンの世界』(河出書房新社)など。近刊は米デジタルグローブ社と共同制作した、日本初の人工衛星写真集『SATELLITE』(朝日新聞出版社)、『奇界紀行』(角川学芸出版)、『TRANSIT 佐藤健寿特別編集号〜美しき世界の不思議〜』(講談社)など。NHKラジオ第1「ラジオアドベンチャー奇界遺産」、テレビ朝日「タモリ倶楽部」、TBS系「クレイジージャーニー」、NHK「ニッポンのジレンマ」ほかテレビ・ラジオ・雑誌への出演歴多数。トヨタ・エスティマの「Sense of Wonder」キャンペーン監修など幅広く活動。
- 佐藤健寿 THE WONDERLAND 奇界
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名前 | 住 正徳 |
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職業 | 執筆/デザイン/映像制作屋 フリーランス |
物事を正しくみる目がないことを賞賛され、副編集長に就任。 椎間板ヘルニア、十二指腸潰瘍、いぼ痔を抱えるため繁忙期にはどれかが疼く。
- https://twitter.com/sumimachine
- https://www.instagram.com/sumimachine/