サブチャンネル2019.11.11
鹿毛康司(かげこうじ)が考えるCMプランナーのなり方
はじめに
CMプランナーとは、コマーシャルの企画を立案する人のことです。今回はCMプランナー鹿毛康司さんに「どうしたらCMプランナーになれるのか?」を聞いてみました。
プロフィール
鹿毛康司(かげこうじ)
エステー株式会社 クリエイティブディレクター
広告主でありながら、リアルにCM づくりをする変わり者。昔は「こいつ自分の立場を使ってクリエイターを名乗りやがって」とネットに書かれたこともあったが、その怒りは彼のクリエイティブ魂に火をつけた。今ではクリエイティブディレクターとなり、消臭力やムシューダを始めとしたCMを制作している。
初めて考えたCM
- 鹿毛さんが初めて考えたCMは?
- 2007年の消臭力のCMです。とっても美しい人魚が溺れている男性を助けて、自分の秘密の部屋に連れていきます。そこで見つめ合うふたり。男性がキスするのかなと思いきや、「この部屋くさいよ」と言って海に飛び込んでしまう。そのあと消臭力を置いた彼女の部屋に「ぜんぜん臭くない」と花束を持ってくる。そんなCMです。
- どうやって思いついたんですか?
- ハリー・ポッターの映画を観ていたら、とても汚い水の中で戦うシーンがあったんです。「ここに部屋があったら臭いんだろうなあ」、そう思った時に生まれたCMでした。
CMの作り方
- 普段はどうやってCMを考えていますか?
- CMって、ひょんなところから思いつくんですよね。「さあ考えよう」と机に向かってつくる人もいるけど、僕は違う。それを職業にしていないから、ずーっと考えてる。いろいろ考えてたら、ひょんな時に神様がアイデアをくれる。そんな感じかな。
- 思いついたアイデアはどうやって表現しますか?
- 下手でもいいから絵を描いてみる。もしも絵を描けなかったら、写真や絵を切り貼りして表現してみるのもアリ。もちろん公開しちゃいけない自分のメモとして、だけどね。
-
洗浄力CMの企画コンテより抜粋。
「トイレに流れる泡を表現した」と鹿毛画伯は語る。 - もしもアイデアが浮かばない時は?
- 僕は思いついたことをどんどん書き出すことが大切だと思う。「たいしたアイデアではないな」と思っても、ひとつ、ふたつ、みっつとどんどん書き出すんです。すると、そのうちアイデアに行き詰まります。でも、そこでやめずにとにかく出し尽くす。そういう練習をすれば少しずつできるようになるんじゃないかな。
- 例えば、いま僕はある本のタイトルを考えてるんです。でも、なかなかいいタイトルが出てこなくて、メモ帳には300以上の案が書いてあります。書いている時は、「あ、これよいかも」と自分で納得するんだけど、あとで見るとダイアモンドのアイデアじゃなくて石ころのアイデアなんです。それでも石ころを出し続ける。そうすると、いつか神様が「あなたの探しているダイアモンドはこれですか?」とご褒美をくれる。
- これはCMを考える時も同じ。そうやって1ヶ月かけても良いアイデアが出てこない時もあれば、わずか5分で出てくる時もある。例えば、ミゲルが「ラーラーララー♪」と歌うだけの消臭力CM。あれは僕が夢で見たアイデア。これはまさに奇跡で、普通は起きないと思っています。
- CMを考える時に自分の中で決めていることは?
- 僕は自分に禁止していることがある。
- 面白いからといって「あざといもの」にしないこと
面白いからといって「説明調」なものにしないこと
面白いからといって「有名人」をそのために連れてこないこと
面白いからといって人を傷つけないこと
面白いからといって「ダジャレ」を使わないこと - つまり、誰も傷付かずに、小難しくなく、シンプルに、みんなが明るくなれるもの。そんなことを考えています。わずか15秒だから、やっぱり一瞬で楽しい世界を表現したいよね。
- 良いCMアイデアってなんですか?
- まず15秒のCMだったら、15秒ぐらいで読めなかったらダメ。よく15秒のCM案を見るのに1分もかかることがあるんだけど、それ、そもそも15秒にならない。大ヒットするCMは、むしろ見た瞬間に「おもしろい」と思うものだったりする。目的によるけど、「いとをかしなものになっているか?」はひとつの基準だと思う。
- かっこよかったり、
美しかったり、
驚いたり、
笑ったり。 - そういう“心がちょっといとをかしに動かされる力”をもっているものが良いアイデアです。
- どうすればCMプランナーになれる?
- プロのCMプランナーになりたかったら様々な技術を身につける必要があるけど、楽しむためのクリエイティブなら自由にいとをかしを探したらいいと思う。映画をみて泣いたり笑ったりしたことのある人、小説や漫画にはまったことのある人、音楽が好きな人。そういう人としての感情をお持ちの方なら、誰でもCMプランナーになれると思う。
- これからCMプランナーを目指す人へ。
- まずは楽しんで、いっぱい考える。たくさんアイデアを出す。そのためにトレーニングをする。腹筋トレーニングしたことない人がいきなり10回やるのは無理だけど、ずっと続ければそのうち100回でも200回でも、さらには、びっくりするくらいのスピードでできるようになるから不思議だよね。アイデアを出す筋肉をつける。そういうことなのかな。
この記事を書いた人
- エステー特命宣伝部長 高田鳥場(鹿毛康司)
「愛れな」をこよなく愛するエステー特命宣伝部長。別名は鹿毛康司(カゲコウジ)。娘のような花子にじじい扱いされながらも強く生きています。
- エステー特命宣伝部 花子
エステー特命宣伝部の花子です。西川貴教さんと一緒に仕事をするのが夢でエステーに入社しました。2022年は苦手な読書を克服できたので、2023年は同じく苦手な勉強を克服するのが目標です。座右の銘は「人生の岐路に立ったら西川貴教で選ぶ」。